名門クラブの中でも多くの優秀な選手を輩出しているレアル・マドリードの下部組織。
通称、カンテラとも呼ばれる選手育成のための組織ですが、今回はそんなレアル・マドリードの下部組織について見ていきましょう。
カンテラとは?
カンテラ(Cantera)とは直訳すると「採石場」の意味で、スペインサッカーのユース世代における育成組織のことです。
基本的には「下部組織」=「カンテラ」という認識でよいでしょう。
カンテラという言葉はスペインのクラブにおいて共通ですが、特にレアル・マドリードの下部組織は”工場”を意味する「ラ・ファブリカ(La Fabrica)」と呼ばれることもあります。
またカンテラ出身の選手をカンテラーノと呼びます。
下部組織(カンテラ)の構成
ピラミッド図
下部組織は1歳毎の年代別に分かれており、トップチームの下には13のカテゴリが存在しています。
2015年まではカスティージャとフベニールの間にレアル・マドリードCが存在していましたが、現在は廃止されています。
カスティージャをカンテラに含めるかどうかは曖昧な部分ではありますが、レアル・マドリード公式サイトではカスティージャも含めてカンテラとしています。
カンテラに所属している育成選手は、毎年シーズンオフの6月頃になると上のチームに進めるかの選考が行われ、最終的にトップチームまでたどり着ける選手はごく一部に限られます。
また必ずしも年齢の該当するカテゴリに所属するわけではなく、実力が認められれば飛び級で上のカテゴリでプレーすることもあります。
レアル・マドリード・カスティージャ
カスティージャは、正式には「レアル・マドリード・カスティージャ」という名称で、いわゆるBチームに該当します。
時代によってチームの名称は異なり、以前には「レアル・マドリードB」(1991~2005年)という呼び名の時もありました。
1歳毎に年代で別れている他カテゴリとは異なり、カスティージャに年齢制限はありません。
ただリーガにおいてリザーブチーム(=マドリーではカスティージャ)からトップチームへ招集できる選手は23歳未満もしくはプロ契約を結んでいる25歳未満という制限が存在しています。
これはトップチーム枠が埋まっている場合にリザーブ枠に登録してトップチーム起用する(実質トップチームの選手層を増やす)という使い方などを防ぐ意図があると思われます。
あくまでも育成組織ということでしょう。
実際に23、24歳にもなると他クラブへ移籍するケースが多く、カスティージャに在籍している選手は18~22歳くらいの選手が中心となっています。
フベニール
17~19歳の年代でA、B、Cの3つのカテゴリから構成されています。
カンテラからトップチームを目指している選手にとってフベニールAへの昇格は鬼門とされています。
フベニールAはU-19相当のカテゴリですが、18歳未満の外国籍選手移籍の規制が解かれる年代でもある為、外国の優秀な選手が一気に入ってくることにより必然的に内部昇格の割合が下がってしまいます。
日本人でレアル・マドリード下部組織に所属している中井卓大は、現在(2020/10時点)フベニールBに所属しているため、近いうちにこの難関に挑戦することとなります。
カデーテ
15~16歳の年代でA、Bの2つのカテゴリから構成されています。
レアル・マドリードにおけるレジェンドの一人であるラウール・ゴンザレスは1992年に下部組織に入団し、カデーテから所属しています。
インファンティル
13~14歳の年代でA、Bの2つのカテゴリから構成されています。
アレビン
11~12歳の年代でA、Bの2つのカテゴリから構成されています。
カンテラ出身で現在(2020/10時点)もトップチームでプレーしているカルバハル、ナチョはアレビンから所属しています。
ベンハミン
9~10歳の年代でA、Bの2つのカテゴリから構成されています。
レアル・マドリードのレジェンドGK、イケル・カシージャスは1990年に下部組織に入団し、ベンハミンから所属しています。
プレベンハミン
7~8歳の年代が所属するカテゴリです。
下部組織を構成する最も下のカテゴリになります。
カンテラーノ(カンテラ出身)の定義とは?
基本的にはレアル・マドリードの下部組織で育った選手のことをマドリーのカンテラーノと呼びます。
現在(2020/10時点)所属の選手で言えば、カルバハル、ルーカス・バスケス、ナチョ、マリアーノなど。
そこでふと浮かぶのが「どこまでがカンテラーノ?」という疑問。
例えばカゼミロやフェデリコ・バルベルデはマドリー移籍後1年目にカスティージャでプレーしていますが、彼らをカンテラーノと扱うことはないです。
結論から言うと、スペインサッカー連盟やスペインプロリーグ機構などが公式に定めるカンテラーノの定義は存在しません。
リーガはプレミアリーグが導入しているようなホーム・グロウン・ルール(ざっくり言うと自国で育った選手を何名以上登録しないといけないという制度)がないため、自国や自クラブの育成選手を定義付けする必要もないといったところでしょう。
一応リーガのクラブにも関係している近い概念としては、UEFAやFIFAで「クラブ内育成選手」を規定しており、
UEFAの基準:「15歳から21歳の間に自クラブで3年以上プレーした選手」
FIFAの基準:「12歳から23歳の間に自クラブでプレーした選手」
と定められています。
FIFAには所属した期間などは決められていないようです。
ただし、ヨーロッパのクラブにとって重要になるのはUEFAの基準。
UEFAの大会に出場するにあたり、国内育成選手を8人以上、そのうちクラブ内育成選手を4人以上登録する必要があるため、UEFAの基準がより重視されます。
そうなると18歳からマドリートップチームでプレーしているヴァランはクラブ内育成選手に該当しますが、ヴァランをカンテラーノと呼ぶのは非常に奇妙。
カンテラ(下部組織)でプレーしていないのにカンテラーノ(カンテラ出身)と呼ぶのはおかしな話です。
つまり「UEFAの定めるクラブ内育成選手≠カンテラーノ」ということになりますね。
結局のところ、カンテラーノという言葉の厳密な定義は存在しないということになりますが、細かいところは気にせずマドリーのカンテラで育った選手がマドリーのカンテラーノと認識していれば特に問題ないでしょう。